大人の夏休みの自由研究~北アルプス大縦走~後編

大人の夏休みの自由研究~北アルプス大縦走~前編 はこちら

8/25(4日目)船窪キャンプ場~冷池キャンプ場

船窪キャンプ場(1:33)~針ノ木小屋(6:40)~種池山荘(13:31)~冷池キャンプ場(15:24)泊

距離:19.4km    1921mD +

夜中中、降り続ける雨だった。テントはびしょ濡れなのはもちろん、エスケープビィビィとシュラフの中もかなり濡れてしまった。そんな状況でも連日動き続けてきた疲労もあり、濡れた体で寒いながらも眠りにつくことができた。この濡れた状態の道具等をしまうのも中々億劫だ。できるだけシェルター内で荷物をまとめ、シェルターから出たら素早くシェルターを撤収。バックパックに全ての荷物を詰め込んで、今日の行動を開始した。

僕が背負っているバックパックはパーゴワークスの「rush30」というバックパックだ。メイドインジャパンのメーカーで、重さは690gとものすごく軽いわけではないが背負い心地が気に入っている。今回の旅にもだいぶ馴染んできたようだ。

スタートして早々に七倉岳~蓮華岳の急傾斜地を進む。途中長い鎖場もある難所だった。その上暗い夜道と雨風が吹きつけるこの上ない条件が揃ったフルコースである。

<風が凌げる場所で撮った動画>

蓮華の大下りでは(今回は登っている)、西風がビュービュー吹きつけ、真っ白のガスで先の見通しが悪い。こんな状況では慎重に進まざるを得なかった。

<ガスと強風の中を進む>

途中風よけになる場所でザックを下ろし体勢を整えて針ノ木小屋を目指した。しかし、なんだか違和感を覚える。。さっきまで風は進路の左から右に吹き上げていたのに、右から左に風が吹いている。地図を確認すると、来た道を戻ろうとしていた。すぐに気づいて良かった。来た道を戻るなんてそんな馬鹿なことあるか~。と思うかもしれないが山道では時おうにしてこういうことがある。山の神のいたずらとでも言おうか。狐につままれたようだ。

<針ノ木小屋>

進路を修正し、針ノ木小屋でホット一息の休息をした。カップ麺とコーラで充電。昨日からルートが変更になり、時間的に見ても、今日行く予定だった唐松岳へはかなり難しい状況だ。コースタイム20hを越す五竜山荘までも難しそうである。(TJAR参加資格として、4泊のビバーク。ビバークの前後にはコースタイム20h以上の行動が必要というのがある。)

状況は常に変化している。最優先にすべきは、当然自身の安全。今の状況を冷静に判断して今日は冷池キャンプ場までの行動と決めた。

針ノ木小屋を出て針ノ木岳の山頂に到着した。スバリ岳方面を進む予定が、進む道を間違え少しロストした。はじめは進む道にしっかりした踏み跡はあるのだが徐々に跡が薄くなってきた、「ここ道?ちょっと違う雰囲気だなあ。」といった違和感センサーが道迷いを防ぐのに重要になる。このセンサーは、経験値が大きいだろうか。ひとまず、違和感・不安を感じたら地図、コンパスを確認するなど面倒くさがらずに行うようにしている。今日はどうやら道迷いDAYのようだ。

<針ノ木岳>
<山頂で進路を少しそれてしまった>

YAMAPで進路を確認して、コンパスでも進む進路の北を確認し、正しい道へと進路を修正した。種池山荘まで到着する頃には雨が止みはじめ、風もしのげる地形になった。今日は時間にも余裕ができたのでラーメンとポカリ、行動食を購入。暖かい食べ物が有難い。

<種池山荘>
<ちなみにラーメンは1000円、ペットボトルは500円程度が相場。>
<種池山荘を出発し爺ヶ岳方面>

15時台に冷池キャンプ場へ到着することができた。今日のテント数は自分を含め、4張り。

<デザインがおしゃれな看板>
<靴の両外側が穴が空いてしまった>

明日は、白馬頂上宿舎まで行く予定に変更した。八峰キレット、不帰嶮(かえらずのけん)と北アルプスの三大キレットの2つを1日でまとめてやっつけてやろうという行程だ。明日に備えて休みたい。

8/26(5日目)冷池キャンプ場~白馬頂上宿舎キャンプ場

冷池キャンプ場(1:30)~キレット小屋(4:49)~五竜岳(7:30)~唐松岳(10:15)~天狗山荘(13:30)~白馬頂上宿舎キャンプ場(15:43)

距離:20.0km    2366mD +

山を登る。山だから当然山あり谷ありの登り下りを繰り返す。水平の平坦な道は、まず少ない。なぜ人は山に登るのだろうか?

その答えは、100人いたら100人の答えがあるのではなかろうか。山のアップダウンと共に自分の心の中もアップダウンを繰り返す。

決して、「楽しい」だけでは片付けられることができない複雑な感情が混じり合う。ちょっと悲しい出来事があったけど、山の登りとともに気持ちも上げていこう!今この山の中にいる幸せ、チャレンジできる幸せ。それを感じながら今日も前へと歩を進める。

 

深夜1時30分。外は真っ白なガスの中、キャンプ場をスタートする。間も無くして鹿島槍ヶ岳へ到着。

<鹿島槍ヶ岳南峰頂上>

鹿島槍ヶ岳から五竜岳へは急峻な岩稜帯を下り、登る。夜の間は、雨で岩場も濡れているのでより慎重さが求められた。八峰キレットは有名だが、個人的には前後の岩場を通過する際の方が危険性が高く、注意が必要だと感じた。キレット小屋を通過して、五竜岳を目指し登っていく。

<真っ白なガスの中進む>
<八峰キレット(八峰小屋)に到着>

徐々に天気が回復してきて五竜岳や谷を挟んで向こう側の立山連峰やこれまで通ってきた稜線が見渡せた。ここぞというばかりにスマホを手にとって写真を撮る。

五竜岳山頂では大展望を見ることができた。

<五竜岳山頂の展望>
<鹿島槍ヶ岳方面>

五竜山荘でしばし休憩をする。今の晴れのうちに濡れっぱなしの道具類をバックから引っ張り出して、テーブルやイスに並べる。30分ほどでテント類など大分乾いて軽くなった。

<五竜山荘休憩中>

荷物をつめて、先を進んだ。唐松岳へ到着し、ここから先は今回一番の核心部といってもいい不帰嶮(かえらずのけん)だ。急峻で切れ落ちた山の地形は、高度感を感じ時折足下をすくわれる。要所にはしっかりと鎖も設置されているので、確実に下っていった。

<唐松岳頂上>
<慎重に高度を下げていく>

1時間ばかり緊張の時間が続き、登り返しの天狗ノ大下りを登って天狗山荘へ到着した。

天狗から白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳付近は石灰岩の白さが目立つ、比較的なだらかな山容で、また晴れた日に来てみたいと思った。

<白馬鑓ヶ岳>

白馬頂上宿舎へ到着し、この日は食堂でカレーを食べて、テント場にて寝床についた。

<頂上宿舎のテン場>
<食堂のカレー>

8/27(6日目)白馬頂上宿舎キャンプ場

距離:38.3km    1725mD +

白馬頂上宿舎キャンプ場(0:04)~雪倉岳(2:58)~朝日小屋(6:07)~栂海山荘(11:10)~白鳥小屋(13:40)~親不知(16:57)

日が変わり、27日0時を過ぎて1日がはじまった。今日は最終日でゴールの親不知海岸海抜0mまでの行程だ。

<日付が変わると同時にスタート>

スタートして早々に白馬岳山頂に到着。風は強いが、下界の町の明かりが見える好天の中を進む。

<白馬岳>
<山頂から白馬村の夜景>

雪倉岳へ向かう途中の道は、深夜の真っ暗の中進んだが、とても良い雰囲気の道を進んでいるのがわかる。雪倉岳~赤男山はガスが出てきて、みず道がいくつもあり、登山道との判別がわかりづらく迷いながら進む場面もあった。

<雪倉岳山頂>

朝日岳分岐から直接朝日岳へ登ると1時間ほど時間を短縮できるが、現在持っている行動食が足りるか不安もあったので朝日小屋を経由した。

<朝日小屋が見えてきた>

ここでの名物ひと口サイズの鱒の寿司(マス、くるみ、鯛)とお菓子を購入する。山の上でますの寿司が食べれるなんてなんて幸せなんだろう。

小屋を出発し、朝日岳、その先の栂海新道を目指す。途中日本海や町並みを望むことができた。

<朝日岳山頂付近から>
<奥には日本海>

目指すべきゴールが見えてきた。と思いきや、栂海新道で黒岩山1600mまで高度を下げ、尾根沿いを日本海へ目指していくが1500m、、、1600m、、、1500m、、1600m、、、あれ、高度下がってないですよね。

犬ケ岳を過ぎて栂海山荘までやってきた。外観は奇抜な無人山小屋である。(国立公園外になっている)

1300、、1100、、1200、、1100、、1200、、1100、、、1200、、とアップダウンを繰り返し白鳥小屋までやってきた。

 

<白鳥小屋>

最後というのもあるのか、疲労なのか、はたまた気が焦っているのか、靴底がすり減ってグリップが悪くなってしまったのか、下りが続く道で何回も転倒した。転倒とともに気持ちも下り坂。最後の力を振り絞って坂田峠まで下りてきた。

気持ちを取り直し、ここからは比較的なだらかで走りやすい、走らされる道を進み、親不知を目指した。走りやすいといっても、もちろん単純に下りだけじゃないことはこれまで通ってきた道の経験から「ですよね~」と心の中でつぶやいた。

 

<うっすら奥に海を感じる>

トレイルからバーーーン!!と開けて日本海を望む展望地は最後までなく、あえてそういった道にデザインされているのだろうと思いながら国道8号に到着した。

日本海はすぐそこだ。国道を跨ぎ、親不知海岸へ。念願の日本海が目の前に広がっている。

 

<親不知の日本海>
<ゴールの親不知海岸>

今回のチャレンジを通して、様々な経験をすることができたし、間違いなくやって良かった。

その中で特に感じたのは、

楽しいのではなく幸せなんだと感じた。(もちろん楽しいという要素も欠かせないが)

山に登れている幸せ。

ご飯を食べれる幸せ。

下界での安全な暮らしの幸せ。

下界で帰還を待ってくれている家族がいる幸せ。

すべての出来事に感謝を感じることができる。

山旅には、そんな魅力があると思った。

生きている幸せを感じることができた35歳大人の自由研究でした。

最後まで、お読みいただきありがとうございました。今回の記事が皆さんに何かしらの役に立てていれば幸いです。

<自分メモ>

○下りが続く場合は特に慎重に

○ポールは2つが有効な場所、1つが有効な箇所、必要ない箇所がある。めんどくさがらずその都度出し入れをする

○手袋は完全防水性でも手の中の汗や外からの雨の侵入で濡れてくる

○レインウェアのフードをうまく活用。寒い時、雨が激しい場合はコードもしっかり閉めて密着性させる

◯今回のデータ

☆研究テーマ☆

北アルプスは繋がっているのか?海と山は繋がっているのか?

スタート 魚津ミラージュランド

ゴール  親不知海岸

走行距離 185km(ロード29k,トレイル156k)

累積標高    15,107m

累計コースタイム 138時間

日数   5泊6日

ルート

ミラージュランド~剱岳~雄山~五色ヶ原(泊)~薬師岳~黒部五郎岳~双六小屋(泊)~赤牛岳~船窪小屋(泊)~鹿島槍ヶ岳~冷池山荘(泊)~五竜岳~白馬頂上宿舎(泊)~朝日岳~親不知

<親不知駅までラン後帰路につく>

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

走って47都道府県をめぐる旅「日本一周☆旅ラン」を実施&完走(2015-2016)。 サブスリー達成。トライアスロンアイアンマンレース完走。「走る」を通じて「自然」、「旅」、「人」、「走ること」のすばらしさや楽しさを伝える。