前編では、整備に取りかかる前の近自然工法や登山道の見方について、合同会社北海道山岳整備の岡崎さんからのレクチャーのお話を紹介しました。普段見えているようで見えていない視点の切り替えについてとても興味深い内容でしたので、見られてない方はぜひご覧ください<前編はこちら>
さて、後編は今回の整備区間での内容についてです。
今回の内容は、水の流れと人の踏圧による浸食箇所の整備です。主な整備箇所は3箇所で以下の作業を行いました。
・ヤシネットによる植生復元
・巨石移動&階段工
・石組みによる階段工
ヤシネットによる植生復元
今回の整備は、法面が浸食で裸地化してしまった箇所を施工していきます。
使用する資材は、「ヤシネット」を使用します。ヤシ素材は腐りにくく丈夫なため、少々の踏圧にも耐えられます。
ヤシネットを適切な長さに切り、等高線に近い状態でバンセンを使って留めていきます。ヤシネット内には、小石や砂利などを入れる場合もありますが、今回石等何も入れません。傾斜があり、資材を入れると重みにより固定するバンセンが外れやすくなるためです。
巨石移動&階段工
登山道上で支障になっていた巨石があり、今までは滑落を注意して谷側を進むか大きな岩を乗り越えるルートになっていました。
そのため、1つの大きな岩を移動させることにより、安全に進むことができるようになります。その移動させた岩がこちら!
この岩を本当に移動させたの??とい思えるような大きさでした。
もちろん、1人の怪力の力持ちの人が持ち上げた、、、というわけではなくバールを使い、複数人で少しずつ、ずらして移動させていったようです。
移動させたのは、前日に行ったということで、今回はより安心して歩けるように石組の階段の設置を行いました。
石組みによる階段工
施工前は表土が出ており、踏圧により植生も完全にはえないため、大雨が降ると水の勢いで大きく土砂流出してしまっていました。
隣接している谷川から大小の石を持ってきて、石組みによる階段工をすることになりました。イメージとしては、石畳の道のようなかたちです。
ポイントとしては以下の3つです。
①大きな石を使う
大きな石は、動かすのには大変だがその分重みがあるので動きにくいです。もちろん自分で持てる範囲でのものが基本になります。ここで重要なのがケガをしないことです!重い分、大きな事故につながりやすいので、運ぶ際には十分注意が必要です。
②下から積み上げる
一番下となる始点の石が重要です。土台があってその上に様々な石が積み上がり、階段を構築していきます。
③テコの原理・重心を理解する
石材に限らず、資材を固定するときは重心が大切です。支点・力点・作用点を考えて判断できるようになると、大きな石でも簡単に動かすコツがわかるようになります。
石組みの方法はシンプルです。「隣の石とくっつける」→「石の上に乗せていく」を繰り返していくだけなのですが、これがとても難しく、一筋縄ではいきません。
岡崎さんに、石組の構造を教えてもらい、「なるほど!」と理解はできるのですが、実際にやってみようとすると「あれっ?これでいいのかな?」「なんかしっくりこないなあ」となります。何でもそうかもしれませんが、知識を身につけて理解し、実践してみる。他の事例や経験を積んでいくということが大切だと改めて感じます。
独学で学ぶと間違った方向に行ってしまいかねないので、今回の講習のような機会があるのはとても貴重ですね。
丁寧に石が組み合わせ、登る人、下る人の目線で次の一歩、その次はここが歩きやすいといったかたちで、配置していきます。逆に、歩かせたくない箇所には大きい石や不安定そうな石を置くなどして、ここには足を置かないだろうという工夫をしていきました。
そして、完成した石組みがこちら。
ビフォーアフターでは、見違えるようになりました。
これにより、土砂の流出を最低限に抑えるようになったかと思います。
一通り作業を終え、今日は特に事故もなく無事に終わることができました。
さいごに
各地で様々な登山道の整備が行われていると思います。その整備の中に近自然工法という考えを取り入れてみてはいかがでしょうか。
<参照>
パンフレット「登山道を直す~近自然工法の考え方と技法~」の作成について | 信越自然環境事務所 | 環境省
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